近年、Netflixや Huluといった映像配信会社の日本参入で、アメリカの映画やドラマがより身近な存在になって来ました。アメリカのドラマといえば、懐かしいものだと『Beverly Hills, 90210』や『Full House』、『Melrose Place』、『Friends』、社会現象にまでなった『24』、ここ数年では映画と遜色ないスケールで大人気の『The Walking Dead』や『The Game of Thrones』などがよく知られているところです。アメリカの映画やドラマは内容が面白いこともあって、英語学習に利用している方も多いのではないのでしょうか?スラングや今の『生きた』英語を学ぶのには、映画やドラマは適しています。でも、映画やドラマ以外にも英語の学習に活用出来るテレビ番組があるのをご存知ですか?
アメリカの幼児向け教育番組の金字塔
著者が住む地域には、日本のNHKのEテレのような位置付けの子供向け番組を流しているチャンネルがあります。最近著者は、10ヵ月になる息子と子供向け番組をよく観るのですが、久しぶりに懐かしい番組を目にしました。それは、セサミストリート。日本でも、1971年から2004年まで放送されていたので、「当時、よく観ていた」という方も多いのではないでしょうか?番組を観たことはなくても、ビッグバードやクッキーモンスターなどのセサミストリートの顔ともいえるキャラクターぐらいは知っている方が大半だと思います。さて、このセサミストリート。まさか?と思われるかも知れませんが、英語学習者にはお勧めの番組なのです。
幼児向け番組だからと馬鹿に出来ない
著者も5年ほど同番組のお世話になりました。当時は、番組を録画してテキストを使用していました。最初の感想は、「幼児向け番組なのに、言ってることが全然分からない!」。ちょっと凹みました。セサミストリートは確かに幼児向け番組ですが、英語の初級者にはかなり難しいのです。理由はいくつか考えられます。まず、?登場人物が、通常の速さで英語を話している、それから、?マペット(キャラクター)の話す英語に変な癖があったり、個性的な声で話すので聞き取り辛い、次に、?子供の話す英語(エルモという赤いマペットは、3歳児の設定)が分かり辛い、最後に、?アメリカの文化背景が理解出来ない、などです。
日本の幼児向け番組と異なる点は?
日本の幼児向け番組では、番組ホストのお兄さんやお姉さんが大きな分かりやすい声で、視聴者である子供に語り掛けるのが普通です。しかし、セサミストリートでは大半の視聴者が3から5歳児にも関わらず、登場人物たちはみな普通の速さで話します。子供相手だからといって、容赦なしです。赤ちゃん言葉も一切なし。もちろん、子供向け番組なので、スラングや4レターワードと呼ばれる悪い言葉は使用されていませんし、幼児に分かりやすい言葉を選んでいます。セサミストリートで話される英語の速さは、普段から親や大人が幼児に話している速さと同じぐらいです。
キャラクターの英語が分かり辛い理由
英語学習者から時折聞かれるのが、「英語のネィティブスピーカー以外が話す英語が分かり辛い」ということ。ご存知の通り、英語を話すのは何もアメリカ人やイギリス人など、英語を母語としている国民ばかりではありません。インド人の英語やフィリピン人の英語もあれば、ヨーロッパ人の英語と、わたしたち日本人同様に、独特のアクセントがあります。そして、声も話し方も様々で、わたしたちが英語の非ネイティブスピーカーだからと言って、必ずしも分りやすく話してくれるとも限りませんね。セサミストリートのキャラクターたちが話す英語は、ある意味社会の縮図です。特に移民国家のアメリカは、みんながみんなネイティブスピーカーではありません。その点、癖があるアクセントや話し方が日常茶飯事のセサミストリートは、『いろいろな英語に慣れる』には適していますね。
子供の英語は超難関?!
日本語を話す幼児でも、時々何を言っているか分からないことがありませんか?なぜか不思議とお母さんは、そんな難解な宇宙語のような子供の言葉を理解出来るのです。その理由は、お母さんが毎日子供と接する中で、子供の言葉に慣れてくるからです。幼児が話す英語も同様で、何を言っているのか分からないことも珍しくありません。発音は明瞭でないし、声も高くて、文法も正しくなかったり。私たちが英語のネイティブスピーカーでなくても、子供には知ったこっちゃないのです。昨年、ジャニーズの山下智久さん(以下、山P)が自身の冠番組『大人のKiss英語』の中で、ロサンゼルスでベビーシッターをする企画がありました。2人の女の子と1人の男の子のシッターをする山Pは、一番下の男の子の英語が分かり辛いとこぼしていました。すると、上のお姉ちゃんが山Pに「慣れたら段々と言っていることが分かるようになるよ」とアドバイス。本当にその通りなのです。子供の英語は、確かに成人の英語より聞き取り辛いのですが、慣れの問題はあります。前出の非ネイティブスピーカーの英語と同じことが言えますが、大人の英語のみ理解可能…では、ヒアリング能力は不十分です。人種・国籍・老若男女問わず話す英語が理解出来なければなりません。子供の英語が理解出来るようになると、ヒアリング能力がかなり上達したといっていいと思います。
アメリカの文化や流行を反映
最近のセサミストリートの主題歌が、ちょっとヒップホップ調になっていて驚きました。数を勉強するコーナーでは、ヒップホップダンスが披露されることも。登場人物も、インド出身の女優が出演していて、みんなでヨガを楽しむ回があったり。スペイン語を話すマペットも登場しました。セサミストリートも世の中のトレンドに沿って進化しているのです。番組開始当時には、インド人やスペイン語を話す登場人物はいなかったと記憶しています。アメリカではインド人やスペイン語を話す人の人口も増えていますから、そういった社会情勢も反映されているのでしょう。
豪華過ぎるゲスト陣
幼児向け番組と思っていたら、豪華なゲストが登場して驚かせてくれるセサミストリート。過去には、かの故マイケル・ジャクソンやプリンス、レイ・チャールズにB.B.キング、ビヨンセ、ケイティー・ペリー、ブルーノ・マーズなどがゲスト出演しています。俳優に至っては、ジュード・ロウ、アダム・サンドラー、ロバート・デニーロ、ナタリー・ポートマン、エイミー・ストーンなど、豪華過ぎる面子です。一番の目玉は、ファースト・レディーのオバマ夫人のゲスト出演でしょう。ゲスト歌手は主に、マペットたちと歌を唄います。俳優たちは、『Word on the street』というテーマに沿って、その日番組内で勉強する単語について説明します。このコーナーが、非ネイティブスピーカーにはとても分かりやすく、かつ勉強にもなります。例えば、ジュード・ロウは『cling(まとわりつく)』を、テレビ番組の司会で有名なナンシー・オーデルは『pollinate(受粉する)』という単語を説明していました。英語学習上級者には当然お馴染みの単語ですが、初級者には良い勉強になります。しかも、知らない単語を聴覚だけでなく視覚からも学べるのも良いところです。視覚は、記憶をより鮮明に残すのに有効ですと言われているからです。
最後に
セサミストリートは、現在YouTubeで観ることが出来ます。興味のある人は是非チェックしてみてください。幼児向け番組だからと偏見を持たずに観ないのは、勿体ないかも知れません。豪華なゲスト陣を拝むだけでも、観る価値は十分にあるのではないでしょうか?
photo by:Sesame Street
written by: Olivia