ブラット・ピッドとアンジェリーナ・ジョリー夫妻の離婚。ドロドロの離婚劇が展開される中、連日のテレビの芸能番組での報道や週刊誌での特集など、アメリカでも注目が集まっています。ブランジェリーナ夫妻の離婚報道には、アメリカの離婚事情がよく分かる諸々が凝縮されています。そこで、今回はアメリカの離婚事情についてご紹介します。
ブランジェリーナ夫妻の離婚申請の詳細
ブランジェリーナ夫妻の離婚報道で、現時点で明らかになっている点を手短にまとめてみましょう。
1. アンジェリーナ・ジョリーが突然離婚をファイルした。寝耳に水だったブラット・ピットは大変ショックを受けている。?
2. 離婚の理由は、『修正不可能な相違(不和)』。
3. 不和の主な原因は、ブラットの酒・麻薬問題と子供に対する暴力(暴言)。
4. アンジーが単独親権を求めている。ブラットには訪問権のみを与えたい。
5. ブラットに養育費は求めていない。
6. 共同財産分与の揉め事は最小限
7. ブラットがハリウッドの家から出て行った。
アメリカは州によって法律が異なる
離婚に関する法律が全国津々浦々どこでも同じの日本とは異なり、アメリカでは州によって異なります。50州あれば、50通りの離婚に関する法律があるのです。ブランジェリーナ夫妻の場合は、カリフォルニア州の法律が適応されます。日本ではどこの市役所にでも離婚届を提出することが可能ですが、カリフォルニア州で離婚申請する場合は、夫婦のどちらかが結婚期間中の少なくとも半年をカリフォルニア州で、またカウンティ(郡)で3ヵ月の滞在が条件となります(※1)。
ある日突然配偶者から離婚をファイルされることも
家庭内別居はあったものの、このような形で一方的にアンジーから離婚をファイルされると夢にも思っていなかったと言われているブラット。日本で離婚するには、調停離婚にならない限りは離婚届に夫婦が署名・捺印後、市役所に届ければ終わりです。これが日本が結婚と離婚が世界一簡単な国といわれている所以です。一方、カリフォルニア州では、夫婦の内の一人が相方にお伺いを立てずとも離婚を申請することが出来ます。Summonと呼ばれる召喚状とPetition for Dissolution of Marriageと呼ばれる婚姻取り消しの請願書を裁判所に提出することから離婚の手続きは始まります。請願書は相手に届けられ、受理後30日以内に合意か異議申し立ての回答をしなければなりません。
離婚の理由は求められない
アメリカ人セレブ夫妻の離婚でよく聞く言葉、『修正不可能な相違』。英語では、irreconcilable differenceといいます。日本語でいうところの、いわゆる『性格の不一致』や『価値観の相違』がこれに該当します。カリフォルニア州では離婚の理由は求められません。たとえ配偶者に不貞があったとしても、離婚が自分にとって有利に進みません。カリフォルニア州では、ノー・フォルト・ディボース(No Fault Divorce)制度が適応されていて、相手の過失や罪が問われたり罰せられることがないのです。日本では配偶者に不貞があれば、不倫相手と配偶者から慰謝料を請求することが出来ますが、カリフォルニア州では出来ません。したがって、たとえ配偶者に不倫された上に離婚をファイルされても誰からも慰謝料は取れず、泣き寝入りということになります。
日本のような単独親権は珍しい
子供のいる夫婦が日本で離婚するとなると、親権が母親にいく場合が大半です。父親・母親のどちらかだけに親権が与えられる日本。一方、アメリカでは単独親権は非常に珍しいのです。多くの場合は、共同親権(joint custody)を持つことになります。共同親権が取れない場合は、配偶者に暴力や虐待、依存症など明らかに子供の安全面に問題があると考えられる場合のみ。 今回、アンジーが単独親権を求めている背景には、ブラットの飲酒やマリファナの問題や、子供に対する虐待の疑いがあるからだとされています。相手にこのような問題があると、親権争いに有利に働くのです。親権欲しさに、配偶者に虐待癖があるなど虚偽の申告をして陥れようとする人もいるのだとか。
また、無職の場合、子供に安定した生活を提供出来ないとして、親権を取れない場合もあるようです。海外で暮らすにあたって、女性も経済的自立が大切であるのは、もしもの場合に備えることが出来るから。それに、互角に相手と闘うために弁護士を雇うとなれば、先立つものが必要です。子供がいる場合の離婚は長期戦が予想されます。その意味でも、仕事に就いていることが重要なのです。
親権と訪問
親権や訪問・面会(visitation)は、双方の話し合いの後、最終的に裁判官が決定します。アンジーの場合は、子供は母親とともに生活し、育児責任を単独で持つことを希望。ブラットには子供に会うことを認める訪問権を許可する、としています。アメリカでは離婚した両親を持つ子供が、平日は母親と暮らし、週末は父親と過ごすことも珍しくはありません。訪問については時間帯まで細かく取り決められます。
知人に実際に起きた出来事を紹介しましょう。知人の小学生になる娘は平日は母親と生活し、週末は父親(知人)と生活していました。土曜の朝に母親が娘を父親の自宅まで送り、日曜の夕方に娘を迎えに行くことが条件となっていました。ある日曜のこと。母親が娘を迎えに行ったときに、諸事情で父親と娘が家にいなかったのです。「娘を返そうとしないつもりだ!」とパニックになった母親が警察を呼び、ちょっとした騒動に発展しました。結果的には大事にならずに済みましたが、訪問の内容の変更を勝手に行うことは出来ないのです。
連れ去りで実の親でも誘拐犯として指名手配に?
共同親権がある場合、片親が相手の合意なしに国外はおろか、州外に子供を連れ出すことは許されていません。カリフォルニア州では時折、子供の連れ去り誘拐犯として親が指名手配されることがあります。子供を連れ去った車のナンバーがテレビで公開され、目撃情報を呼び掛けることも珍しくはありません。たとえば、ヒスパニック系の親が子供を連れてメキシコへ行くのに国境を越えようと目論むニュースを時折耳にします。
日本も2014年に正式にハーグ協定に加盟したのはみなさんもご存知の通り。離婚後、実家を頼って住み慣れた日本へ帰りたいと思っても、共同親権とハーグ条約のために嫌でもアメリカに住み続けることになる恐れがあります。万が一、勝手に子供を日本へ連れて帰った場合は、あなたは立派な誘拐犯に。子供の返還に応じる必要があるだけでなく、あなたがアメリカに再入国した場合は、即逮捕となります(実際、そうなった日本人女性がいます)。アンジーは子供と海外で暮らしたいという噂がありますが、ブラットと共同親権を持つことになった場合は、彼の合意なしでは希望は叶わないことになります。
後半『【国際結婚】婚前契約のプリナップ(プレナップ)って知ってる?』へ続く。。。
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written by : Olivia