2017年8月24日、アメリカ中が大きな興奮に包まれていました。その日アメリカの宝くじの当選者が出るかどうか、全米中が固唾をのんで結果を見守っていたのです。当選金額は7億5870万ドル。日本円にすると約836億円に相当します。日本の宝くじの一等賞が5億円、前後賞を合わせても7億円であるという事実と比較すれば、いかにこの賞金が尋常でない額であることが分かりますね。そこで今回はアメリカで大人気の宝くじ、パワーボールについてご紹介します。
アメリカの宝くじ・パワーボールって?
この超高額賞金を叩き出した宝くじはパワーボールと呼ばれ、44州とコロンビア特別自治区、プエルトリコ、そしてアメリカ領であるバージン諸島で販売されています。その名前の由来は、数字が書かれたピンポン玉ほどのサイズの白いボールが抽選に使用されているからです(ちなみに、日本では風車式抽選機を使用)。これらのボールが透明の容器の容器に入れられ、グルグル回りながら当選番号が自動的に出てくる仕組みです。購入の際には、パワーボールナンバー(日本の宝くじでいうところの組番)を1から35までの数字の中からひとつ選びます。次に、1から59までの数字の中から6つを選択。こられの数字は自分で決めることもできますし、機会に自動にさせることもできます。抽選は毎週水曜と土曜の東部時間の午後10時59分に行われます。
宝くじの一等当選確率はサメに襲われて命を落とす確率より低い
パワーボールの最大の魅力は言うまでもなく、その高額の賞金でしょう。8月24日のパワーボールの当選者は、単独当選としては最高額の836億円を獲得。ちなみに、一等に当たる確率はなんと約2億9200万分の1。今日のアメリカの人口が約3億2600万。大まかにいうと全米中で約1人だけが当選する計算になります。ちなみに、雷に打たれる確率が1千万分の1、毎日飛行機に乗っていて事故に遭う確率が20万分の1、サメに襲撃されて死亡する確率が1億1000万分の1なのですから、836億円当選の確率がいかに天文学的だったかが分かりますね。余談ですが、当選確率である約2億9200万分の一を上回るのは、隕石に当たる確率(100億分の1)ぐらいでしょう。パワーボールの当選金がここまで高額になる理由は、誰も6つの数字を当てることができない場合、当たるまでどんどん繰り越しされて行くから。2016年の1月のパワーボール史上最高当選額であった約1586億円は、繰り越しに継ぐ繰り越しを経て、毎週雪だるま式に賞金が膨らんでいった結果だったのです(こちらは3名が当選しました)。
当選額も半端じゃないいけど、引かれる額も半端じゃない?
アメリカの宝くじの当選金の受け取り方法が、一括と年金(分割)の2種類があるのをご存知でしょうか?一括払いを選んだ場合は、当選金から約6割もの連邦税及び収税が引かれるというから驚きです。836億円当選の女性のケースを例にあげると、マサチューセッツ州の税金5%が引かれ、実際に手にする額は約329億円ほどに減額されてしまいます(それでもまだ恐ろしいほどの金額ですが…)。方や、年金(分割)払いは満額を受け取ることが可能です。しかし、30年に渡って当選金を受け取ることになります。分割のメリットは、無茶な散財で破産する心配がないこと。デメリットは、今から30年後が予測できないこと。若いうちならともかく、いわゆる中高年にとっては、自分が30年後に生きているかどうか定かではありません。そんな理由からか、当選者の多くは一括払いを希望するということです。
高額当選者は辛いよ?!
さて、836億の当選金を手にした幸運すぎる53歳の女性は、当選を知った彼女はすぐに勤務先の病院に辞職を伝えたそうです。この女性は昨年購入した車のローンの支払いの他には当選金の使い道をまだ決めていないのだとか。836億円もあれば、今後悠々自適な人生が約束されているに違いないと思いませんか?しかし、実際には宝くじやカジノの高額当選者の中には、大金を手にした故に不幸に見舞われたケースも珍しくはないようです。例えば、2005年にイギリスの宝くじで約7億を獲得した男性は、3年で当選金を使い果たして現在は消息不明に。また、以前ラスベガスのカジノでジャックポットを当てたホテル勤務の女性は、酷い交通事故に遭って重症を負い、同乗者は亡くなってしまったというニュースを耳にしています。他にも、遠い親戚や(自称)友人や知人が突然現れてお金をたかったり、最悪の場合は金銭問題がこじれて殺人や事件に巻き込まれることもあるようです。アメリカでは宝くじやカジノの当選者は身元がバレていますから、命を狙われる危険性もあるわけです。836億円の当選者の自宅前には、身の安全を確保するために現在24時間体制で警察が駐在しているそうです。
顔を出しても大丈夫?なぜ高額当選者は顔出しするのか?
著者は常々、アメリカで宝くじの高額の当選者が出るたび、テレビで顔や名前を公表しているのを不思議に思っていました。調べてみるとその理由が分かりました。どうやらほとんどの州では、当選者の顔と実名の公表が法律で義務付けられているのです。そうすることで、抽選にイカサマがなかったかを世間に知らしめる目的があります。また、当選者の顔を明らかにすることが人々の宝くじの購買欲を増加させるとかで、主催者側の宣伝も兼ねています。当選者の中には完全な顔出しはNGということで、黒いサングラスをかけてメディアの前に現れる人も。どうにか顔出しを回避できないのかと思っていたところ、著者の旦那から素晴らしい回答が。『日々の生活を困難にしないために、代理人(弁護士など)を雇って代わりにメディアに出演させ、その後は正当な手続きを踏んで氏名を変更し(アメリカでは氏名の変更は難しいことではありません)、自分の存在が完全に分からないようにする』そんな方法があるとは知りませんでしたが、なかなかの妙案ではないでしょうか?
同僚たちと一斉に会社を辞めよう!お楽しみのグループ買い
パワーボールの賞金が高額になると、職場でしばしばみられるのが『グループ買い』です。個人だと購入額はしれていて当選の確率が下がりますが、複数になると話は別。参加希望者を募ってみんなでお金を出し合い、できるだけ多くの宝くじを購入する作戦です。公平性を満たすために、発起人は参加者名と集まった合計金額、そして宝くじそのもののコピーを参加者全員に配ります。『もし参加しなかったら、一等に当選した場合、このフロアの社員は君以外全員仕事を辞めてしまうよ』などと発起人に説得され、過去に著者も何度かグループ買いに参加したことがあります。高額どころか100ドルすらも当選したことがないのは言うまでもありません。
おわりに
宝くじのほとんどの購入者が一生涯において高額当選を経験できないのは周知の事実。それでもみんな一攫千金を夢見て宝くじを購入するのは、日本もアメリカもそう変わりません。ひとつ異なるとすれば、それはアメリカのパワーボールの一等賞金が、想像を絶するほどの高額だということでしょう。それこそ、真のアメリカンドリームです。なんでもスケールが大きいアメリカですが、デカいのは国土やステーキのサイズだけではないのです。残念ながら、アメリカ国外からはアメリカの宝くじを購入することはできません。しかし、アメリカ訪問中であれば購入が可能です。次回アメリカを訪ねる機会があれば、是非パワーボールを購入してみてはいかがでしょうか?
参考文献:
1 Winning Ticket In $758.7 Million Powerball Lottery
URL: http://www.huffingtonpost.com/entry/powerball-lottery-winning-ticket_us_599e72cfe4b05710aa59bae6
Wikipedia: Powerball
URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Powerball
Written by: Olivia