食事が美味しくないと、日本人旅行者には不評なアメリカ。そんなアメリカでも、在米年数が長くなるにつれて、だんだんと不味いものに対する耐性が培われてきます。ところが、いつまでたっても、美味しいと感じられない食べ物があるのです。在米歴10年以上の日本人と、未だに慣れない・美味しくないと思うアメリカの食べ物・飲み物はなにかを討論するときに、必ずと言っていいほど登場する全く不名誉な常連のいくつかをご紹介します。
1)Twizzlers (トゥイズラーズ)
見かけは、一見硬いグミのよう。細長くてねじれています。色は赤と黒があり、イチゴ味、チェリー味などがあります。その味は、なんとも形容しがたいのです。薬品のような味とでも言いましょうか…。Kさんは留学中に、アメリカ人の学生がこれを美味しそうに食べているのを見て、即購入。一口噛むやいなや、吐き出した経験があります。まさしく『今までに食べたことのない味』でした。想像を絶するインパクトがあるこの不気味な食べ物の正体は、リコリスです。一体何で出来ているのでしょうか?…ウィキペディアによりますと、 『リコリス菓子とはスペインカンゾウ(リコリス、天草の一種)の根およびアニスオイルで味付けされた菓子である。(※1)』とされています。歴史は古く、紀元前5年ごろから薬用のハーブとして使用されてきたとか。日本でも、葛根湯や醤油にも使用されているそうです。トゥイズラーズの類似品に、Red Vines(レッド・バインズ)もあります。味は変わりません。この超絶不味いトゥイズラーズですが、アメリカ人には老若男女問わず人気があります。日本人にはぶっちぎりの不人気です。アメリカ在住の日本人社員が日本へ出張するときに、トゥイズラーズをお土産として持って行くとも聞いています。もちろん、話題作りと、受け狙い目的です。そう言えば、フィンランドにも、どう見てもタイヤのような黒々した見てくれと、アンモニア臭が漂うリコリス菓子Salmiakki(サルミアッキ)があるそうですね。リコリスだけでもたいがいなのに、それにアンモニア臭って、考えただけで恐ろしい…。
2)Root Beer (ルートビア)
一見、コーラのような炭酸飲料です。しかし味の方はと言いますと、トゥイズラーズを初めて口にした時のような衝撃的な味です。湿布薬のような味です。どこをどうしたら、こんな味に?と、思ってウィキペディアで調べてみますと、『ルートビア(root beer)は、アルコールを含まない炭酸飲料の一種。商品としてのルートビアは、アメリカ合衆国において19世紀中頃に生まれたとされる。バニラや、桜などの樹皮、リコリス(天草の一種)の根(root;ルート)、サルサパリラ(ユリ科の植物)の根、ナツメグ、アニス、糖蜜などのブレンドにより作られる。(※2)』…なんと、これにもリコリスの根が入っているではありませんか!恐るべし、リコリス!神出鬼没です。こちらも、アメリカでは根強い人気があります。多くの在米日本人によりますと、バニラアイスを浮かべたルートビア・フロートは、湿布薬のような味が緩和されるともっぱらの噂です。そんな食べ方をしないで、純粋にバニラアイスを美味しくいただきたいところですが…。ちなみに、ルートビアは日本でも、沖縄では飲まれているそうですね。
3)Dr.Pepper (ドクターペッパー)
こちらの炭酸飲料は、日本国内でも一瞬だけ売り出されたことがあるので、知っている人も多いのではないでしょうか?アメリカでは、どこのスーパーでも飲食店でも普通に流通している飲み物です。しかしこのドクターペッパー、日本人にはなかなか受け付けにくい、かなりパンチのきいた味をしています。よくこの味が商品化されたなと驚きます。ルートビアにも似たような、薬品系の味がします。しかし、リコリスが原料として使用しているかは不明です。ウィキペディア曰く『ドクターペッパーの味は、ソーダ・ファウンテンにあった数種類の味を混ぜて作られたということになっているが、23種類とされている原料は未だに非公開であるため確認できない。(※3)』。薬品系の味がすると思ったら、味を調合したのはなんと薬剤師でした。しばしば周りの在米日本人の間で、ルートビアと ドクターペッパーでは、どちらが(より)不味いか論争が勃発するのですが、今のところルートビアが優勢です。ルートビアは、『在米歴も長くなったから、もしかしたら美味しいと思うようになってるかも?と思って再挑戦するも、やはり激マズに変わりなかった…』となる人が多数。かたやドクターペッパーは、『最初はなんじゃこりゃ?と思ったけど、飲み続けるうちに慣れた(注意:美味しいとは言っていません)』となる人が多いようです。
4)Cherry Coke (チェリーコーク)
ルートビア、ドクターペッパーとくれば、やはり次はチェリーコークでしょう。 先出のふたつよりは若干飲みやすいかも知れません。しかし、チェリー味と聞いて日本の佐藤錦のような高級サクランボ味を想像して飲むと、期待を裏切られてショックが大きいです。アメリカでチェリー味と言えば、色も味も濃いアメリカン・チェリーです。とは言え、じゃあアメリカン・チェリーのような味なのかと問われると、ちょっと微妙です。このての味に慣れていない人には、ルートビアや ドクターペッパー同様、薬品・ケミカル系の味としか思えないでしょう。チェリー味は、なぜかアメリカではとても人気があります。キャンディー、アイスクリーム、ジュース、ゼリー、はたまた、のど飴から小児用の抗生物質や風邪薬など、ありとあらゆる食べ物や医薬品にチェリー味が使用されています。チェリー味は、アメリカ人が好む味なのかも知れませんね。
5)Eggnog (エッグノッグ)
11月の感謝祭ごろからスーパーで店頭に並び、ホリデーシーズンによく飲まれるホリデードリンクの定番です。洋風の卵酒とでも言いましょうか。最近では、某米系遊園地でも期間限定で発売されているらしいですね。日本のエッグノッグは、日本人の舌に合うように作られているのかも知れませんが、アメリカのは違います。味は、微妙です。好き嫌いが別れそうな味です。日本にこれに似た味がないので、形容しがたいです。それに、なんと言っても甘すぎるのです。今までにエッグノッグが大好き!と公言して愛飲している日本人に出会ったことがないので、日本人好みではない味のかも…。ウィキペディアによると、『エッグノッグは、牛乳ベースの甘い飲み物である。牛乳、クリーム、砂糖、溶き卵(ふわふわした舌触りを付ける)で作られ、挽いたシナモンとナツメグで味を付ける。ラム酒、ブランデーやウィスキーのようなさまざまなアルコールを加えたエッグノッグも存在する。(※4)』とあります。温かくして飲むイメージがありますが、スーパーで売られているのは冷えた状態です。冷たいエッグノッグのほうが美味しいと言う声も聞きます。味にはバリエーションがあって、パンプキン味なんてのもあります。どんな味になっても、二口目は遠慮したい味には変わりありません。ヨーロッパでも飲まれているそうですが、アメリカのものとは違って美味しいのか気になるところです。
6)激甘のケーキ
言わずと知れた、アメリカのケーキやカップケーキ。その甘さも衝撃的ですが、色も見るからに危険な感じです。最近では、ニューヨークのブルックリンにあるベーグル屋さんで虹色のベーグルが発売されたのも記憶に新しいところ。ケーキがカラフルなアメリカならではで、とても人気があるそうです。こちらは味と言うより、日本人的には色目が問題かも知れませんね。ケーキに青や紫や緑、ハロゥイーンの頃には、目がチカチカするような鮮やかなオレンジや黒が使用されているなんて、ホラー以外の何物でもありません。原色好きと言われる関西人も、思わずひるんでしまう色使いです。一瞬にして食欲がなくなります。そして、その悪い予感を裏切らず、人工着色料がたっぷり使われた健康に悪そうなバタークリームは、歯に染みるほど甘く、不味いのです。追い打ちを掛けるように、下のスポンジもあり得ないほどの甘さ。どれだけ砂糖が使われてるのでしょう?アメリカ人は、味覚障害なのかと疑うほどです。繊細な見た目と味のケーキに慣れたわれわれ日本人にとって、アメリカのケーキを食べるのは苦行以外のなにものでもありません。しかし、アメリカで生まれ育った帰国子女のSさんは、初めて日本のケーキを口にしたとき、「美味しくない!」と思ったそうです。理由は、全然甘くなかったから。彼にとって美味しいケーキとは、アメリカのケーキの甘さが基準だったのです。
さいごに:You are what you eatと言うのであれば…
英語にYou are what you eat ということわざがあります。『食べるものが、その人を作る』『食は人なり』的な意味です。ここで紹介した日本人にとって不味い食べ物や飲み物は、多くのアメリカ人にとっては、美味しいと感じるものであったり、子供のころから親しんだ故郷の味でもあります。それを考えると、You are what you eatならぬAmericans are what they eatだと思わされます。今回ご紹介した食べ物・飲み物を未体験のみなさん、百聞は『一食(一飲)』にしかずです。機会があれば話のタネに、ぜひ果敢に挑戦してみるのはいかがでしょうか? ただし、味の保証はまったくできませんのであしからず。
出典:Wikipedia
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