『お客様は神様』ではない!お客を選ぶ権利があるアメリカ

SNSの普及に伴って、『モンスタークレーマー』という言葉を日本でよく耳にするようになりました。日本でこんな調子なのだから、不名誉にも訴訟大国で有名なアメリカは、さぞかし酷いと思っていませんか?確かに、ニュースになるようなクレーマーもいます。しかし、アメリカは日本と決定的な違いがあるのです。それは一体どのような点なのかをご紹介します。

素行の悪い客はいならい

『We reserve the right to refuse service to anyone 』アメリカのレストランや店舗でこのようなサインが表示されていることがよくあるのをご存知でしょうか?サインの意味はそのまま、『私たちにはサービスをお断りする権利があります』となります。もっと簡単に言えば、『店側に客を選ぶ権利がある』ということ。お客様は神様です…精神の日本から来た著者からすると、強気な姿勢だなと驚くとともに、感心もさせられます。ある意味、アメリカではサービスをする店側と客が対等な立場にあることを意味しています。いくら客だからといっても、目にあまるような客の態度であれば容赦しないという強い意思の表れです。

土下座なんてありえない

店員に土下座させている写真がSNS上にモンスタークレーマーによってアップされる…なんてことは、まずアメリカではありません。土下座自体が日本の風習でアメリカにないという事実を横に置いておいたとしても、客に強要されて素直に(もしくは、屈辱的に)土下座することは到底考えられません。たとえそれが場を収める単なるパフォーマンスであって、心が伴っていなくても、です。アメリカでもしモンスタークレーマーが、不条理な理由で店側に因縁をつけてきたらどうなるか。まず店主(担当者)が取る行動は、状況説明をすることでしょう。それでも客が納得しない場合は、責任者が出て来ます。責任者と話ししても客の興奮が収まらず、暴言・絶叫や暴力があるとどうなるか。警察を呼ばれます(ちなみに、映画の中では「出て行け!」と、店主が客にライフルを突きつけることも…それは現実ではどれぐらいあるか不明ですが)。

有名人の知り合いだからって、それが何?

著者のアメリカ人の友人Jは、米系のホテルに勤めています。フロントして働く彼の話によれば、ホテルはクレーマーの宝庫なのだとか。もちろん、正当な理由でクレームをあげる宿泊客もいるものの、クレーマーの多くは理不尽な理由でクレームをあげるのだとか。クレーマーたちはまるでタチの悪い当たり屋のようだと彼は形容していました。クレーマーに共通している点は、不条理さだけではありません。言葉遣いや振る舞いに問題があり、品行方正からほど遠いことも珍しくないのだとか。酩酊状態の客や、明らかにドラッグの影響がある客、ホテルの従業員を見下した発言をする客、人種差別的な発言をする客も。他の宿泊客がいるにも関わらず、怒鳴ったり叫んだりすることも。そんな素行の悪い客は、ホテル側の判断と権限で出て行くように伝えるのだそう。それでも出て行かない場合は、最終的には警察を呼ばれます。客であっても、私有地で問題を起こして他の宿泊客の迷惑になるのであれば、容赦なしです。警察もよくあることなのか、クレーマーの扱いには慣れている様子。Jが出くわしたある女性客の話です。「私を誰だと思っているの?私はXX(世界的に有名な某ミュージシャン)の友達よ!」と凄んだのだそう。「では、うちのホテルに宿泊して頂かなくても結構ですので、XXの家に泊めてもらったらいかがですか?」と、彼はさっさと警察を呼んだそうです(ちなみに彼が後で調べると、彼女は本当に某ミュージシャンと故意にしていたようです)。ホテル側からすると、だからどうした?以外のなにものでもありません。たとえ客が大統領の親友だ!と脅したところで、迷惑な客である限り警察を呼ばれるのが関の山なのです。

サービスする側にも人権がある

かなり強気に思えるカスタマーサービスですが、あくまでも客が理不尽なことを言っているとき、素行が悪いときに限ります。『We reserve the right to refuse service to anyone』のサインは、トラブルを回避するためにサービスする側が事前に客に警告をしているのです。また、いくら客を選ぶ権利があるとはいっても、人種や見掛けでサービスを断れば、訴訟がお家芸のアメリカですから後々訴訟に繋がる可能性があるのは言うまでもありません。今の時代、客もSNSで店の評価をすることが可能です。明らかに店側がおかしい場合は、店の評判にも影響し、潜在的顧客を失うことになるでしょう。客は大切ですが、屈辱的な思いをさせられてまでサービスする必要はないのです。その点、アメリカにはサービスする側にも人権があり、客は彼にはちゃんと尊厳を持って接するべきだという当然の事実が尊重されています。この記事を読まれている方には心配は無用だとは思いますが、アメリカを訪れたさいには、お店やホテルで恫喝したり騒ぎを起こして警察を呼ばれることのないよう、くれぐれも注意しましょう。

まとめ

著者が日本に一時帰国するたびに感じることは、日本ではカスタマーサービスが行き届いていて、丁寧な対応だなということです。もちろんこれは素晴らしいことです。アメリカの適当で大雑把なカスタマーサービスに慣れてしまうと、逆にカルチャーショックを受けます。しかし同時に、日本でサービスを提供する側に回ると、細心の注意を払うために非常に疲れることは過去に10年日本で働いた経験からよく理解出来ます。日本では、とりあえず謝ることが多いですよね。まさに、「すみません」で回る社会です。アメリカでは自分が悪くなければ、絶対に謝りません(自分が悪くても謝らないことも…)。日本の文化や習慣、国民性からして、アメリカのようになるのは恐らく不可能だと考えられます(そうなれば、もはや日本が日本ではありませんしね)。しかし日本でも、いきなり「はい、警察!」は無理にしろ、サービスする側の人間がもう少し客と対等の立場に立つことが出来れば、クレーマーは調子に乗らないのではないでしょうか?そうすれば、サービスする側の気苦労も少なくなるのではないかという気がします。みなさんはどう思われますか?

photo by: http://s1.7match.biz/ala/english-hotel-3/

written by : Olivia

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