前回ご紹介した記事、『一体何歳まで子供が産める?アメリカの高齢出産事情 [前編]』で、セレブたちの高齢出産や、その裏事情などをご紹介しました。今回は、アメリカ社会における人々の高齢出産に対する考え方をご紹介します。
高齢出産に対する風当たりは?
日本で高齢出産となると、外野がなにかとうるさくありませんか?「年老いた親で子供が可哀想…」、「子供が成人するころには親は定年…」、「子供が20代になのに親の介護問題が…」といった意見が多い印象を受けます。アラフォーでもかなり厳しい意見を耳にしますし、それがアラフィフともなれば、親のエゴだ!とけちょんけちょんに言われます(某 議員や某タレントの妊娠・出産で、世間がどんな反応をしたか思い出してください)。では、アメリカではどうでしょうか?著者が知る限りでは、そういったネガティブな意見は今のところ特に耳にしたことがありません。その理由を検証してみましょう。
他人のライフスタイル・意思を尊重
アメリカでは個人主義が徹底しています。価値観も他民族国家のため人によってかなり異なります。そのためか、他人のことには良い意味で無干渉。いろいろ意見するのは無粋だし、お節介だと考える傾向が。アラフォーの出産であっても、それがドナーの卵子を使用した妊娠であっても、養子縁組制度を利用するにしても、夫婦が話し合って決めたこと。他人のライフスタイルや意思は尊重する人が多いのです。『何歳だからこうするべき(しないべき)』とか『みんなこうしているから、こうするべき』といった考えの押し付けは受け入れられません。中には、高齢出産に対してネガティブな印象を抱いている人もいるでしょう。しかし、そんなことを公で発言することは、ハラスメントになります。常識のある人なら、心の中にしまっておくはずです。
年齢不詳のことも珍しくない?
それに、そもそも職場で長年一緒に働く同僚であったとしても、相手の年齢を知らないことも多いのです。履歴書に年齢を記載する必要がありませんので(法律で禁止されています)、たとえ面接担当者でも応募者が実際に何歳なのか分かりません(とはいえ、大体職歴で見当は付くでしょうが…)。だから、誰が何歳で妊娠・出産したかも不明なことも。人種が入り混じっているので、女性の見た目もバラバラ。自分より若いと思っていた人が実は年上だったり、その逆だったりということも珍しくありません。アジア人同志ならまだしも、人種が異なると年齢がよく分からないことも。高校生の息子がいるという同僚が、どう見ても自分より若い…それもそのはず。聞けば、16歳で出産したということも。ノーメイクで出社する女性が大半なこともあり、余計に年齢を言い当てるのは容易ではありません。
学校に授業参観日はない
アメリカには日本のように、母親が教室の後ろに品評会のようにズラリと並ぶような形式の授業参観日がありません。だから、若い母親の中に高齢の母が混じって悪目立ちしている…という光景もなし。「お母さんだけおばあちゃんみたいで恥ずかしかった!」と子供に非難される心配もありません。もちろん、アメリカにも懇談会や、PTAの職員やボランティアとして参加する学校行事があります。新学期が始まってすぐのころには、教師に会って授業の方針などを聞くための『back to school night』という催しに足を運ぶ必要があります。親がまったく校内に足を踏み入れないというわけではないのです。ただ、授業参観日という名の公開処刑がないのです。もし、アメリカにも授業参観があったとしても、前途の通り、他人の年齢を言い当てることが困難な理由で、年齢に対してそこまで悲観する必要はないのでは?と思われます。
望めば一生現役?
ひとりの子供を成人させるには、1000万は最低でも必要だといわれている昨今。高齢出産したら、子供が成人するころには定年では?と心配になる人がいてもおかしくはありません。ところが、アメリカの一般企業では定年がありません。何歳でも働こうと思えば、企業に求め続けられる限りは働けるのです。アメリカでソーシャル・セキュリティーと呼ばれる公的年金を受給できる資格がある年齢は、62歳です。満額を受給できる年齢が現時点で65歳。最近の60代はみな若いですし、家にいても時間を持て余すだけ。また、年金の満額支給まで3年あるという理由で、著者の周りでは65歳を目途に退職する人が多くなっています。
大学の学費は自分で工面することも
その理由に加え、大学の学費を学生ローンから借りたり自分で働いて稼ぐ人も多いので、なんでも親が負担というわけでもありません。優秀な生徒には大学から返却不要の奨学金も支給され、その数は日本のそれとは比べ物になりません。アメリカでは、日本のように高校卒業してすぐ大学に進学が当然というわけでもありません。したがって、本当に大学に行きたい人は、何歳であってもいろいろな手段を駆使してでも行くのです。親が裕福でないというのが、大学に進学しない理由・言い訳にはならないのがアメリカです。
老後は子供に頼らない
また、親の介護については、アメリカでは日本のように自宅で家族がすることは珍しく、親も子供には期待はしていないのが現状です。そこはやはりお国柄が出ているようで、たとえ年老いても子供の言いなりになりたくない、親の尊厳を守りたいと思う親が多いのが特徴です。子供に頼れないなんて心細いのでは?と、日本人なら考えるかもしれませんね。アメリカでは、子供が高校を卒業したら一人前と見なし、子供の人生は子供の人生と割り切って考える親御さんが少なくはありません。
まとめ
高齢出産に対して外野がうるさくないからといって、アメリカで高齢出産を特に奨励しているわけではありません。高齢出産になればいろいろなリスクの割合が上昇することは、他人にとやかく言われなくても、母親が一番理解していることです。高齢出産に対して風当たりがきつくない一番の理由は、アメリカ人に楽観的な人が多いことかも?と著者は睨んでいます。「どうにかなるか」と思う国民性。それは、貯蓄額の低さからも伺えます(それが良いのかは別として…)。まさに、案ずるより産むがやすし、ですね。加えて、キリスト教文化が根付いているからか、高齢で子供を授かることを前向きにとらえる人も。著者が妊娠中に出会ったアメリカ人の看護師の女性は、45歳の時に自然妊娠して息子を授かったそうです。そのことについての彼女の言葉は、非常に印象深いものでした。「Everything happens for a reason(何事にも理由がある) 」母親が高齢であっても、新しい命の誕生は素晴らしいものです。アメリカ人のこういったポジティブな考え方は、是非見習いたいものですね。
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written by: Olivia