好き嫌いが真っ二つに分かれる食品の代表格としてあげられるパクチー。パクチーの料理専門店まで出現しているようですね。また、パクチー風味の焼きそばやパクチー風味のポテトチップスが期間限定で発売されたのも、みなさんの記憶に新しいはず。現在日本で空前のブームになっているパクチーですが、世界を見して見るとパクチーはブームとは関係なく食されていることをご存知でしょうか?そこで今回は、世界のパクチー事情と、パクチーの驚くべき事実をご紹介します。
パクチーには様々な呼び方がある
パクチーはセリ科の一種で原産は地中海とされ、昔からハーブ・薬味として使用されてきました。日本ではパクチーの名称でお馴染みですが、これはタイ語です。実はパクチーには様々な呼び方があるのです。英語ではパクチーは、【コリアンダー(coriander)】。中国では【シャンツアィ(香菜)】。ベトナムでは【ザウムイ】。ポルトガルでは【コエントロ】。そして、アメリカでは【シラントロ(cilantro)】。
世界のパクチー料理
主にアジア諸国や南米諸国で常用されているパクチーですが、添え物や風味付けが主な役目です。日本のパクチー愛好家『パクチニスト』のようにパクチーのみを食べるという話は、著者が暮らすアメリカでは耳にしたことがありません。タイ料理にはトムヤムクンなどのスープに、ベトナム料理には生春巻きやフォー、ベトナムサンドイッチに。中国料理には粥や鍋料理に、メキシコ料理にはサルサに…という具合。多国籍な料理が楽しめるアメリカでは、パクチーにお目に掛る機会が多いかも知れません。
あなたのパクチー嫌いは遺伝子のせいかも知れない
『カメムシの味がする』これがパクチー嫌いの人の大多数の意見です。何物にも形容し辛く、似た味が思いつかない、まさに唯一無二の風味ですよね。パクチーなんて人間の食べるものじゃない!と思う方に興味深い話をひとつ。近年のある調査では、パクチーが嫌いは遺伝子のなせる業だということが判明しています。この調査を行ったのは、アメリカに本拠地を置く遺伝子解析サービスを提供する23 and Meという企業。同社の研究員が50000人の顧客を対象に行ったところ、ヨーロッパにルーツを持つ約半数の人がパクチーが苦手であることが分かりました。また、人種的に見ると、東アジア人・アフリカ系・白人のパクチー嫌いは、東南アジア人・ヒスパニック系・中東系の倍以上であることが分かりました(※1)。
全てはOR6A2の成せる業
日本人にとってはカメムシ味のパクチーですが、欧米人はその風味を別のある物に形容しています。それは、石鹸です。前出の調査では約13%がパクチーを『石鹸のような』味だと回答しているのだそう(※2)。人間にはOR6A2と呼ばれる味覚受容体遺伝子があります。この遺伝子に何らかの異変がある人は、香味成分であるアルデヒドに対して敏感だと言われています。アルデヒドはパクチーに多く含まれ、その独特の風味を形成しています。なんと驚くことに、石鹸もまたアルデヒドを多く含んでいるのです。つまり、OR6A2に異変のある人の脳内では、『パクチー=石鹸=毒・非食品』と認識されているのですね(※3)。
将来パクチーが好きになる可能性も?
さて、遺伝子レベルでパクチーが嫌いなら仕方ないと諦めて(胸を撫で下ろして?)いる人に朗報です。あることを実践すると、パクチー嫌いを克服することができるかも知れません。その方法とは?パクチーを食べ続けることです。食べ続けることで脳が学習し、『パクチー=毒ではない』と認識するのだそう(※4)。要するに、食べ慣れろということですね。
おわりに
著者も当初はパクチーの自己主張の強さに驚愕したひとりです。しかし、アメリカでパクチーを頻繁に口にする内に、段々と味が気にならないようになりました。舌(脳)がパクチーの味に自然と慣れたのです。そう言えば、今では大好物のオリーブも、最初に食べた時は美味しいと感じませんでしたっけ。パクチーにしろオリーブにしろ、少しクセの強い物には案外中毒性があるのかも知れませんね。
参考文献:
(※1、2&3)Cilantro Love and Hate: Is It a Genetic Trait?
URL: https://blog.23andme.com/23andme-research/cilantro-love-hate-genetic-trait/
(※4)Cilantro Haters, It’s Not Your Fault
URL: http://www.nytimes.com/2010/04/14/dining/14curious.html
Photo by http://ahp-urawaza.jp/hozon/1094/
Written by Olivia