アメリカの祝日サンクスギビング・デー(感謝祭)ってどんな祝日?

クリスマス、バレンタイン・デー、ハロウィンと、欧米の文化を取り入れ独自に変化させる日本。某テーマパークのマーケティング戦略の影響で、次に人気が出るのはイースター(復活祭)という噂も。しかし、さすがにこれは日本には根付きそうもない…と思われるアメリカ(とカナダ)の祝日があります。それは、サンクスギビング・デー(感謝祭)。サンクスギビング・デーは聞いたことはあるけど、どんな祝日かよく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、サンクスギビング・デーにまつわるあれこれをご紹介します。

サンクスギビング・デーって、どんな祝日?

サンクスギビング・デーはアメリカとカナダの祝日で、アメリカでは11月の第4木曜日と決まっています。今年2016年は、11月24日です。清教徒がイギリスからアメリカへ渡った翌年の1621年が起源とされています。新天地で迎える初めての厳しい冬に食べるものに困窮していた一団に、見るに見かねたネイティブアメリカンが食料を与えたり、作物の種を与えました。翌年の11月に命の恩人のネイティブアメリカンを招いて、初めて収穫した作物や狩った野生の七面鳥などをふるまってともに食事をし、感謝の気持ちを表したとされています。宗教色が薄いので、多くのアメリカ人がこの史実に基づいた祝日を祝います(※1)。

サンクスギビング・デーの定番料理

サンクスギビング・デーの料理は大体決まっています。定番家庭料理をご紹介しましょう。

メイン:

  • 七面鳥
    サンクスギビング・デーの主役です。下処理されて中が空洞になった七面鳥の中に、スタッフィングと呼ばれる詰め物を入れてオーブンで焼き上げます。スタッフィングは、セロリや玉ねぎ、パンなどに香辛料を加えたものです。七面鳥の焼き方は家庭によって異なり、毎年コンテストも開催されます。マリネの仕方で若干味に違いが出ますが、一般的に味は淡泊で、チキンよりもヘルシーとされています。淡泊な分飽きやすく、七面鳥が数日続くと、「もう来年のサンクスギビング・デーまで七面鳥は見たくない」という気分になるのは、サンクスギビング・デーあるあるです。

副菜:

●クランベリー・ソース
クランベリーを煮詰めたもの。缶詰で代用することも。七面鳥にかけます。

●グレイビー・ソース
七面鳥を焼いたときに出る汁に小麦粉などを入れてドロッとさせたソース。こちらも七面鳥やマッシュド・ポテトにかけていただきます。

●グリーン・ビーンズ・キャセロール
インゲン豆、マッシュルームのクリーム・スープ、フライド・オニオンを使ったオーブン料理。上に載ったるフライド・オニオンが絶品です。

●マッシュド・ポテトやヤム
ヤムはサツマイモに似た、オレンジ色の甘く、水分が多いイモです。

●パンプキン・パイ
家庭で焼く場合もあれば、市販のもので代用することも。家庭によっては、アップル・パイやピーカン・パイをいただくことも。

七面鳥にとって受難の日?でも、大統領から恩赦がある?

2012年の調査によると、サンクスギビング・デーのためにアメリカで食べられる七面鳥の数は、なんと4500万羽(※2)。まさに、七面鳥にとっては受難の日。多くの七面鳥がご馳走としてテーブルに並ぶ運命な一方、非常にラッキーな2羽の七面鳥がいます。サンクスギビング・デーの朝、ホワイトハウスで大統領が2羽の七面鳥に屠殺から逃れる恩赦を与える恒例行事があります。正式には、National Thanksgiving Turkey Presentationと呼ばれていますが、わたしたち市民の間では、Turkey Pardonの名で知られています。恩赦を受ける2羽の七面鳥には名前が付けられ、屠殺の心配をすることなくバージニア州の牧場で余生を送るのだとか。

サンクス・ギビング・デーの過ごし方

サンクスギビング・デーが木曜日にあたることから、金曜日を公休にする企業も少なくありません。これで、土日を合わせて実質4連休になるわけです。連休の間は、家族や友人とサンクスギビング・デーの御馳走を食べながらゆっくり過ごす人も多いようです。サンクスギビング・デーのテレビ番組の定番は、アメリカの老舗デパートがスポンサーになっているメイシーズ・パレード、その後にペンシルベニア州で行われるウエストミンスター・ドッグ・ショー、そしてアメリカンフットボールの試合です。犬をこよなく愛す我が家はこのドッグショーを毎年楽しみにしていて、『Best in Show(最高賞)』がどの犬に与えられるかを家族で予想し合います。結果はテレビのニュースでも大きく取り上げられ、愛犬家からの関心が高い催しのようです。

ブラック・フライデーとサイバー・マンデー

サンクスギビング・デーの翌日の金曜日は、ブラック・フライデーと呼ばれ、小売店では大規模なセールが展開されます。ブラック・フライデーと呼ばれる理由は、店の売り上げが黒字になることからきています。ブラック・フライデーには、テレビやコンピューターなどの家電などがかなりの破格で手に入るので、この日にかなりの本気モードで臨む人が続出。開店前に並ぶなんて序の口です。中には、前日や夜中からテントを張って順番待ちするツワモノも。近年では、ブラック・フライデーを前倒ししてサンクスギビング・デーや、早朝の5時などにセールを開始する店が出てきました。店員が祝日を楽しめなかったり、負担が増えるとのことで、やり過ぎとの批判もあります。そして、客のマナーの悪さは年々ひどくなっています。戦利品を手に入れるのに熱くなり過ぎた客が、店の入り口で将棋倒しになったり、商品の奪い合いで喧嘩したり、催涙スプレーを噴射したり…。その様子がテレビのニュースで放送されるのは、もはやサンクスギビング・デーのお約束になりつつあります。人々がお買い得商品を巡って人格崩壊・ヒートアップする姿は客観的に見ると、なんだかなあ…と情けない気分にもなるのですが、半暴動化してしまうほどにお値打ち品が並ぶのは確かです。数に限りはあるものの、目玉商品としてンコンピューターや大型テレビを100ドルや200ドルなどあり得ない値段で売り出す店もあります。知人は、去年のブラック・フライデーにダイソンの掃除機を100ドルちょっとでゲットした!と、息巻いていました。ちなみに、サンクスギビング・デーの週末明けの月曜日は、サイバー・マンデーと呼ばれています。サイバー・マンデーにはオンラインショップで大規模なセールが展開されます。ブラック・フライデーの混雑や狂気を避けたい人は、サイバー・マンデーを狙ってお目当ての商品を手に入れます。

最後に

著者がサンクスギビング・デーが日本には根付かないと思う理由は、日本がまったくサンクスギビング・デーに関係ないということはもちろんですが、キッチンの事情があります。アメリカのキッチンには、アパートでも七面鳥の丸焼きができる大きさのオーブンが標準装備なのです。日本では一般家庭で七面鳥や鶏を丸焼きすることはまずありませんね。それに、そもそも、七面鳥1羽丸ごとを手に入れるのが至難の業。日本にサンクスギビング・デーが取り入れられるようになるには、まず七面鳥自体がチキン同様に食卓のお馴染みの食材になる必要があります。そして、キッチンに大きなオーブンを導入する必要が。それを考えるとかなり前途多難で、恐らく実現しそうにありません…とは思うものの、何があるか予測不可能な日本社会。もしかすると、数年後に日本独自のサンクスギビング・デーが確立されている可能性がまったく否定できないこともありません。みなさんは、どう思われますか?

参考文献:

(※1)The First Thanksgiving, 1621
URL: http://www.eyewitnesstohistory.com/thanksgiving.htm

(※2)Thanksgiving by the Numbers
URL: http://www.cnn.com/2012/11/21/living/thanksgiving-by-the-numbers/

photo by: http://www.danspapers.com/

written by: Olivia

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