近年、増加傾向にある国際結婚。メディアでは、メリットばかりが語られがちです。しかし、国際結婚ならではのデメリットもあるのも確かです。結婚を決意して海外へ移住する前に、是非知っておきたい国際結婚のデメリットには、どんなことがあるのでしょうか?
1)もはや鉄板!言葉の壁?????
やはり避けて通れないのは、言葉の問題です。パートナーと喧嘩するとき、言いたいことが100%言えなくて消化不良な気分になることがあります(逆に、喧嘩で外国語が上達する場合もありますが…)。日本語で思いっきり喧嘩できたらどんなに楽かと、叶わない夢に思いを馳せるのみ…。また、病気や疲労で脳みそが思考停止状態。それでも外国語を話さないといけない状況下におかれると、さらに具合が悪くなりそうです。病院に行くときも、正しく症状を医師に伝えられるのか…?ある意味、命がけです。
映画やテレビを観ても、内容が完全に理解できないと、つまらないですよね?特に、コメディーは、ハードルが高いかも知れません。そもそも、笑いのツボが日本のそれとは異なります(ちなみに、アメリカには漫才はなく、ピン芸人がstand up comedyとして、ジョークを話す形式が主流です)。コメディーでは、スラングも多用されています。住んでる国の時事ネタ・芸能ネタを知らなければ、理解できないことも。sitcom ( situation comedy )に心から大笑いできるようになったら、自分で自分を褒めてあげましょう。
言葉の問題は、まだまだあります。当然ながら、海外に暮らせば、ありとあらゆる書類もその国の言語で書かれています。日本に比べると、学校、病院、職場などで、書類上の免責事項に目を通した後にサインをしなければならないことが多々あります。そして、その文字は小さい上に文字数も多いのがお約束です。読まずにサインしたくなりますが、そこには大切なことが書かれていることがほとんどです。日本語だったら楽だろうなと思わずにはいられません。
2)お金がかかる
国際結婚して海外に住むとなると、帰省は一大イベントです。年に一度は最低でも一時帰国したい人も多いでしょう。住む国にもよりますが、航空券代に泣かされることになります。一人分でも大金です。これが家族の人数分となると、恐ろしい金額になります。一時帰国中に、無料の滞在場所があればいいのですが、ない場合は、ホテル代がさらにかかります。加えて、電車などの交通費。たった1週間でも、一万円は、あっと言う間に消えていきます。国際結婚していると、なかなか貯金が貯まらないのが頭痛の種です。
子供の教育にもお金がかかります。海外で暮らす場合、子供をバイリンガルに育てたい人は多いでしょう。子供に日本語の読み書きもできるようにさせたいなら、現地の日本語補習学校に通わせるのが近道です。しかし、もちろん学校に通わせるには、お金がかかります。よく誤解されがちですが、子供は自然にバイリンガルになるわけではありません。子供の出来は、親の関与や努力にかなり左右されます。日本語を話す機会が少ないと、中途半端でどっちつかずなセミリンガルになることも。子供の将来のために、少々お金がかかっても、補習学校に通わせたいところです。
そして、われわれ日本人が外国に住むとなると、避けて通れないのは、滞在許可の問題です。国によっては、『永住権』とは名ばかりで、数年・数十年ごとに更新する必要があります。しかも、申請料金は年々値上がりする傾向に。完全に足元を見られてます。しかし、外国人が人さまの国に住まわせてもらうというのは、なにぶん立場も弱いので、たとえ申請料金がぼったくりであっても、政府の言いなりになざるをえないのが現状です。
3)老後のこと
縁起でもないですけど、現実的な話。パートナーに先立たれた後の身の振り方を考えておく必要があります。そのまま外国で住み続け、骨を埋めるのか。もしくは、日本へ永久帰国して、日本で余生を送るのか。年老いた外国人がパートナーがいない外国の地で、ずっと外国語を話しながら暮らすというのは心細いだろうなというのは、容易に想像できます。
4)子供の教育方針でもめる
まず問題になるのは、子供をバイリンガルに育てるか否かです。英語圏出身のパートナーを持ち、英語圏で暮らす場合、いわゆるマイナー言語の日本語を教えるべきかどうかでもめることがあります。パートナーが日本語を話す場合は、バイリンガル教育にもかなり理解もあるでしょう。そうでない場合、「なぜマイナー言語を話す必要があるのか?」というようなことを言い出す人もいるのです。「英語は世界の共通言語。英語が話せれば、なにも問題がない」というのが、彼らの常套句です。日本人からすると、「英語を話すからって、調子に乗るな!慢心だ!」と言いたくもなります。
子供とは日本語で心置きなく話したいと思う人も多いはずです。単純に考えても、モノリンガルよりバイリンガルのほうがメリットは大きいですよね?海外のハーフの子供の中には、「なぜ日本語の勉強をする必要があるの?」「なぜ週末に日本語の補習学校に通わなければならないの?」と、泣きながら親に訴える子も います。しかし成人すると、「日本語が出来てよかった」と彼らは口を揃えて言います。モノリンガルのハーフが成人後に親に「なぜ子供のときに、ちゃんと日本語を教えてくれなかったのか?」と抗議した話は耳にします。バイリンガルのハーフは、感謝こそすれど抗議した話は聞いたことがありません。いろいろな考えはあるでしょうが、子供をバイリンガルにしたいと思っている人は、パートナーが反対しても、決して譲らないことです。
5)各種書類の手続きが面倒
結婚、滞在資格、子供の出生届け、そして考えたくないですが、離婚の手続きなど、ありとあらゆる手続きが面倒です。日本は、世界一結婚・離婚が簡単な国です。日本のように、紙切れ一枚ということは、まずありません。国際結婚の場合、結婚の手続きを双方の国で行う必要があります。手続きには、揃えなければならない書類もたくさんあり、費用も掛かります。
たとえば、戸籍の制度がないアメリカでは、州ごとに手続きや必要な書類が異なります。事前に血液検査が必要な州もあれば、ネバダ州のように、婚姻手続きが簡単な州もあります。重婚を防ぐために、近年に離婚歴のある人は離婚届を提出する必要がある州もあるし、マリッジライセンス(結婚許可書)の取得は全州で必須です。とにかく、手間暇がかかるのは避けられません。外国人のパートナーは、外国人との婚姻でなにが必要かは知らない場合がほとんどなので、手続きのややこしさに驚愕するでしょう。もちろん、あなたも調べることがたくさんあって戸惑います。こちらが必死なのに、パートナーが楽観的すぎてあまりにも温度差を感じると、それが原因で喧嘩になってしまうこともあります。結婚の手続きは、二人でする『共同作業』であり、二人の絆を確かめる『テスト』です。ここで挫折するようなら、国際結婚には向いていません。
6)食生活の違い
若いときは海外の食生活にまったく抵抗なく、なんでも食べられる人でも、年を取るにつれて、嗜好が変化していくのはよくあることです。変化というより、むしろ原点回帰かもしれません。幼少時から慣れ親しんだ味が一番!だんだん白米や緑茶の味も分かるようになってきたし、やっぱり和食は最高!!となるのは、よく聞く話です。日本に暮らす日本人でも年を重ねるごとに、『ガッツリ焼き肉より、あっさり和食で』となる人が多いのですから、まったく不思議ではありません。欧米人のパートナーは70歳になっても、ハンバーガーやチーズやら、クリームがたっぷりのった甘いケーキに食らいついているかもしれません。しかし、われわれ日本人が彼らと同じ食生活を送れるかは、怪しいところ。パートナーはパートナーの、あなたにはあなたの慣れ親しんできた食文化があります。食事は毎日のことなので、とても重要です。最悪の場合、お互いに別々の食事を取るようになる可能性も頭に入れておきましょう。
7)なかなか日本へ帰りにくい
私たちが比較的若いころは、さほど気にならないのですが、40代にもなるとだんだん心配になってくるのが、日本へ残してきた親のことです。一時帰国のたびに、久しぶりに見る親が年老いてきたのが顕著に分かってきます。海外にいると、親が病気になったり危篤状態になったりと、緊急事態が発生しても、すぐに飛んで帰ることが出来ません。考えたくないですが最悪の場合、親の死に目に会えないかもしれません。実際に、親だけでなく、祖父母や親戚の葬儀にも出席できなかったという話は、決して珍しくありません。
また、子供ができても、気軽に親に孫を会わせることもむずかしいです。ちょっと子供を預かってもらうことも、手伝ってもらうことも叶いません。それから夫婦喧嘩をして、「ちょっと実家に帰らせていただきます」と、プチ家出をすることもできません。日本を出るということは、このようなことも覚悟する必要があります。
8)子供がいるのに離婚になった
こちらもまた縁起でもないですが、残念ながら離婚に至ってしまった場合。子供がいると、いろいろな制約がついて回ります。ここ最近になって、ハーグ条約について耳にした人も多いはず。ハーグ条約は要約すると、国境を越えた子供の連れ去に関する条約です(詳しくは、外務省のホームページを参照してください)。日本は2014年に、ハーグ条約の加盟国になっています。ハーグ条約があるために、離婚して日本へ永久帰国したいと思っても、元パートナーの同意なしに勝手に子供を連れて行くことはできなくなっています。それでも強行突破したら、実の親であっても誘拐犯として指名手配されてしまうのですから、恐ろしい話です。それで泣く泣く外国にとどまる人もいるのです。休暇で子供と日本へ一時帰国するときも、事前に元パートナーの承諾が必要になります。
他にも、アメリカではよほどの理由がない限り、離婚後に共同親権を持つカップルが多いのですが、弁護士をはさんで、週に何回、どのような条件で子供に会うか、養育費は誰がいくら払うかといった内容が、こと細かく決められます。国内であっても、無断で子供を州外に連れて行ったり、引っ越しすることができなくなります。
最後に
最初から悲観的なことばかりを考えて国際結婚する人はいないと思います。しかし、良い面ばかりしか見ずに国際結婚した場合、後々「こんなはずではなかった」「知らなかった」とギャップに苦しむことになるかも知れません。デメリットばかりに焦点をあてて、必要以上に杞憂するのは馬鹿らしいことです。しかし、デメリットでも知っているのといないのとでは、国際結婚をする覚悟も大きく異なってくるのではないでしょうか。
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